イリノイの閑話休題強盗

The Illinois kanwaQ-die Bandit

与太話なしでは生きていけない作家・吉川良太郎ブログ


18世紀英国医学ロマン『解剖医ハンター』(吉川良太郎 原作=脚本)
徳間書店より全三巻発売中。
*原作に関する虚偽情報にお気を付けください。
また上の事情によりコメントは承認制にしました。
詳細はプロフィール欄を参照してください。

SF短編アンソロジー『SF JACK』
角川書店より発売中。
妖説ジェヴォーダンの獣

十八世紀英国医学ロマン『解剖医ハンター』全三巻。

十八世紀、またの名を「啓蒙の世紀」――
ということは、まだ巷では科学と迷信がせめぎあい火花を散らしていた時代。
特に発達の遅れた医学の状況は現代では信じがたい低水準にあった。
そんな中、医学探求のために夜な夜な墓を荒らし、死体を盗んで解剖し、
ロンドン一の「名医」と「奇人」の二つの称号を冠された男、
ジョン・ハンター。

後にその二重生活から『ジキル博士とハイド氏』の、
またもう一つのライフワークであった博物学(主に動物学)研究から
『ドリトル先生』のモデルとなった「実在の奇人」を主人公に、
その生涯と時代を虚実織り交ぜて綴った物語である。

 

――と、本編はそんな感じで書いたわけですが。

十八世紀英国という舞台は多くの読者にあまりなじみがないだろうから、
単行本には少々の補足説明を、
またスペースの都合で本編では語れなかった薀蓄を語るコラムを掲載することになった。

もちろん字ばっかりのページなんか読みたくないという読者もおられるだろう。
もっともである。教科書読んでるんじゃないんだから。
なので本編が重く暑苦しい反面、コラムは「軽さ」を志向して面白おかしく書いてみた。
まあオマケなので気楽に読んでいただきたい。
それでも時代背景とかべつにどうでもいい、という方もおられよう。
もっともである。実にもっともだが、それでは満足できないのである。
誰が? ぼくが!
オタク三大欲求の一つ
「好きなことを際限なく語りたい欲」
が満足しないのだ!
(残り二つがなにかは各自、胸に手を当てて考えてみよう)

そんなわけで本編にくわえてコラムまで書いてもまだ欲望が治まらないので、
ここでもうちょっとだけ書いてみようという次第。

 

……といったことをブログで話していたのが
単行本第二巻の連載が終わった頃なわけだが、
あれから何年経ったのかしらと小柳ルミ子のような心境になる今日この頃。
いや実はこのコラム、すでにできあがっていながら
アップするのをころっと忘れていただけなのだけども。
以下、第二巻「バスカヴィル家の獣」編の追加コラムになるが、
ネタバレがあるので未読の方は単行本を読んでから
当コラムを読むことをお勧めする。税込650円である(CM)

 

『解剖医ハンター』2巻では「ジェヴォーダンの獣」をあつかった。

いくつかプロットを提示した中から編集者が
「もっともマンガ映えする」とチョイスしたのがこれだったのだ。
昔々ケイブンシャ大百科シリーズとかの怪奇系児童書では
「ジェイボウダーンの黒犬獣」とか紹介されていたものだが、
今どきは知らない人も多いだろうからちょっと紹介しておくと

「一七六四年から六七年の三年間、フランスはジェヴォーダン地方で
正体不明の「獣」(ラ・ベート)が次々と農民を襲うという事件が発生した。
しかし百人以上の犠牲者を出しながら現代でも真相は不明」
という「切り裂きジャック」とならぶヨーロッパ近代の未解決事件である。
マンガは、その獣が今度はイギリスに出現し、

同時代に実在した外科医・解剖医にして博物学者ジョン・ハンターが挑むという話。
第一巻は医師としてのハンターの物語を書いたが二巻では彼のもう一つの側面、
『ドリトル先生』のモデルになった博物学者(主に動物学)
の顔を書こうという趣向である。


で。
プロットから脚本を起こすにあたって、
現代の「獣」研究を詳細に調べてみた。
フランスでは今でも年に一つか二つは新説が発表されるというこの事件、
最新の説を参考にしようと思ったのだが、

 

・現在最も有力な説は「着ぐるみを着た人間だった」説。

・次点は「宇宙人の仕業」説。


……さすがフランス。自由の国だ。

着ぐるみ説は一応、話を考えてみた。
着ぐるみというと間抜けだが、これがたとえば狼の毛皮だったら
「バーサーカー」の伝説
(北欧の伝説で有名だがフランスにもある。ちなみにフランス語では「ベルセルキール」という)
と精神医学をからめた話になるかもしれない。
が、十八世紀の精神医学で事件を解決するのは難しいし主人公とも絡めにくい。
ちなみに「宇宙人説」も五分ほど考えたがボツにした。

さて、どうしたものか。
そんな風に、図書館の書棚の間を顎に手を当ててうろつきながら、
ああでもないこうでもないと考えた末、結局オーソドックスに「獣の正体は狼の大型個体」とした。
物語の核が定まると、あとは同時代の人物たちや社会情勢がパズルのピースのようにはまっていき、
意外にも物語は早々にできあがった。

とにかくこの時代にはキャラの立った偉人が多い。
そのうえ偉人たちが国境を越えて集まる「月光協会」なる組織が存在した、
というから、これはもう使わない手はない。
そうだあの人物はこの時期、政争の敗北、病気で失脚していたが、
仮病で身を隠して陰謀を企んでいたという説がある。
これを悪の黒幕にして国際的陰謀のデカイ話にしよう。

「歴史上の有名人同士が、こんな場所で、こんな事件で出会っていたら?」

というのは第一巻のハンターとクック船長でもやったが、この話でもかなり派手にやってみた。
「史実にはないが、あってもおかしくはない」シチュエーションを描く。
というの
は当作品以前に『異形コレクション』等で書かせていただいた短編などでも
何度か用いた方法なので、興味のある方はぜひご一読を(CM2)


しかし、どうしても埋まらないワクが一つだけ残った。

「人間が狼を調教することは不可能」
というのが現代の動物学の定説であるというのだ。
少なくとも犬のように調教し、いうことを聞かせるのはまず無理だと。
今度は家の本棚の前で頭を抱えながらどうしようこうしようと考えて思いついたのが
「狼使い」(ムヌール・ド・ルー meneur de loup
だった。

 

「狼使い」とは、
十八世紀末までフランスに存在したといわれる魔術師の一種である。
フランス語でmeneurが「〜使い」、loupが「狼」を意味する。
一頭から十数頭の狼を引き連れて農村部を渡り歩き
「人間には調教できないはずの狼を自在に操る」
という強烈なインパクトで魔術の腕前を示し、民間薬を売り歩いたり、
狼への恐怖をあおって「立ち退き料」をせしめたりしたという。


……と書くと、魔術師というよりケチなヤクザみたいだが、
実際そんなものだったのかもしれない。
しかし、狼使いはそもそも実在したのだろうか?
作家であり民間伝承の記録者でもあったジョルジュ・サンドが
『フランス田園伝説集』(簡単に言うとフランス版『遠野物語』)

を書いたころにはもう存在しなかったようだが、
子供のころ狼使いに会った老女の証言が採集されている。
だがサンドが証言を集めた十九世紀当時から狼使いはすでになかば民俗学の領域の存在である。
現代では実在した・しない双方の様々な主張があるようだが、
マンガでは「実在した」説を採用することにした。

では、
「どうやったら狼使いが実在しえたか」
今度は昼食をとりに行った近所のハンバーガー屋で頭を抱えて(中略)
いくつかアイデアをひねり出した中から、
編集長とさらにああでもないこうでもないと相談して選んだのが
「狼と犬の交雑種」だった。

 
狼と犬は交配可能で
(ウルフドッグ、ハイブリッドウルフ等と呼ばれる。ちなみに後にハンターも一頭飼育していた)
難しいが飼育・調教は可能であり、外見はかなり狼に近い。
この交配・調教の技術、くわえてそもそもが困難な狼の生け捕り法が現代では失伝した狼使いの秘伝である。
魔女=民間療法士だった少女の母親は、フランスの狼使いから教わった方法で、
娘の出産と同時期に狼と犬を交配して狼犬を作成、飼い慣らして娘とともに育てた。
十八世紀の英国では島国という環境下で度々大規模な狼狩りを行ったためすでに狼は絶滅していたが、
スコットランドに少数ながら生き残っていた狼(史実)を使用した。
飼育下の良好な栄養状態のため狼犬は大型化した。
当然ながら狼は人より早く成長する。少女が三歳になるころには、もう成熟し大人になる。
と、交尾や出産の経験がなくとも母性・父性が目覚めて彼女を守護しはじめる
(狼は極めて「親」の本能が強いことはよく知られている。
また基本的にボスのつがいしか子供を作らないが、子育ては群れ全体で行い、
驚くべきことに出産経験のないメスが乳を出す例も観察されているという。
実際にやるとしたら交配する犬種も問題だがその辺は特に詳しく設定していない)
熊を除けば狼は森の生態系で最強の生物なので、
どんな猛獣も(むろん人間も)近づかない。
森に住んで薬草の採集・処方を生業とし、またしばしば人間による迫害に遭っていた魔女にとって、
これ以上の乳母はないだろう。

……と、脚本にはある。
実際そううまくいくかどうかは保証できないが、
狼の生態は現代でもまだ不明な部分が多いのだし、なかばは想像で補った。

(実はもう一つ狼を使役する方法についてアイデアがあったのだが、そちらは編集長に

「読者がドン引きします」と言われてボツにした。どんなアイデアだったかは秘密)

 

さらにもう一つ「狼使い」を成立させるトリックがあるのだが……
これは脚本に添えた資料に書いたものの本編には使われなかったので、
別の作品で使うことにする。



以上、
フランスでは今でも年に一つか二つは新説が発表されるという未解決事件に、
極東の漫画原作者が付け加えた「妖説」である。

 

 

ついでなので宣伝。

『解剖医ハンター』で原作者に興味をもたれた方には、
光文社「異形コレクション」シリーズ
『酒の夜語り』『アート偏愛』『Fの肖像』
を紹介させていただきます。
デビューこの方、歴史上の事件・人物をネタにした作品をちまちま書いており、
『解剖医ハンター』に通じる作劇法を用いていますので、ぜひご一読を(CM3)

| 吉川良太郎 | 雑学 | 16:47 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
雑記
レディ・ガガは天正二年、徳川家康が側室於万の方との間にもうけた次男であったが
なぜか家康に疎まれ三歳まで父に会うことなく名前さえ与えられずに育ち、
不憫に思った兄・信康の仲介で対面が実現したものの家康は
「ガガ(三河方言でマドンナの意)に似ておるの」
と一言冷たく言い放ち、幼名を我々丸とされたのであった。
その後秀吉の人質になったり結城家に養子にやられたり
武勇にすぐれ関ヶ原で活躍するも家督を弟・秀忠に奪われたり
生涯を通じて様々な苦労を重ねたが逆境にも決してめげずに
ボーンジスウェイありのままのあなたがステキなのよと自分を信じて
歌とダンスのレッスンに励みやがてスターダムにのし上がったのであった。
自分で書いててなんだが、なんだこれ。
| 吉川良太郎 | 雑学 | 03:47 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
雑記
織田信長の「第六天魔王」とか
ヴラド・ツェペシュの「ドラクル」とか(ドラクル=ドラゴン=悪魔の意。ドラキュラの由来)
こういう暴君や独裁者の異名って
中世の霧に包まれているといかにも魔界の王みたいで恐ろしげだけど
(現代ならもっといい名前で呼ばせるよね。偉大なる〇〇様とか)
冷静に考えたらこれ昔の暴走族みたいなセンスだなとふと思った。
まあ信長は元ヤンだしな。

オレ家督継いだら、ツレの徳川と連合つくって、日本を統一するのが夢である。
鉄砲を、国友か堺か迷ってるけど買って、バリバリいい音させる。
比叡山とか喧嘩上等でブッこんでくんで世露死苦。
生涯現役だもんで。
(鉄甲船にハコ乗りして六連クラクションで「敦盛」を流しながら)

トルコ軍とか喧嘩上等でブッこんでくんで(串を)世露死苦。
(ブラド・ツェペシュ)

盗んだ草履で走り出す木下藤吉郎。

いや盗んじゃダメだろ。
| 吉川良太郎 | 雑学 | 02:50 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
なおえ
直江兼続の兜の「愛」の前立ては「仁愛」「愛民」を意味する。
……というのは後世の創作で
実際は愛宕権現か愛染明王か、軍神の頭文字をあしらったもの。
謙信が毘沙門天の「毘」の字を旗印にしたのを真似たのかもしれない。
というのが現在は定説であるらしい。


ところで、
わが国にはジョン・レノンによって伝来するまで
今日的な「愛」の概念は存在しなかったといわれるが(みうらじゅん説)
戦国時代ごろの日本語で「愛」というと
「男女の愛」ぶっちゃけ「性愛」を意味したという。
(一部、男女でないケースもあるが)
人間関係の基本は愛よりもまず「忠」と「孝」だった時代だ。
なので宣教師たちは聖書を日本語に翻訳するとき
「アガペー(神の愛)」
をどう訳すか悩みに悩んで
「神のごたいせつ」、「神は汝をたいせつに思う」
と、ややヘンな日本語に訳さざるをえなかった
(このへんの話は坂口安吾がエッセイで書いてたと思うがタイトル失念)
という話を聞いたことがあるんだが、
すると戦国時代に兜にでっかく「愛」を掲げて戦場を疾駆するというのは
パンクロッカーみたいでまたイメージが違うな。ピストルズか。
前立ての由来を知らない他国の武士はどう思ったんだろう。


ぼく「直江兼続は上杉家の家老としてベースを担当していたけど、実はベースが弾けなかったんだよ」
ももさん「ウソつけ」

| 吉川良太郎 | 雑学 | 01:29 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
コラムをじきに

『解剖医ハンター』第二巻で設定に使った
18世紀フランスの「狼使い」についてコラムを載せたんだが
中途半端なのでもうちょっとまとまってから再度載せます。

| 吉川良太郎 | 雑学 | 13:41 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
甘いもの
『SFジャパン』の短編ゲラチェックと
次の短編執筆を並行してゴリゴリと作業中。
疲れたので誘蛾灯に誘われる蛾のようにフラフラとコンビニへ行き
エクレアなど買ってみる。
最近は男性向けデザートなんてあるのだな。


「大人の男性は甘いものを好まない/好むとなんか恥ずかしい」
と考えるのは日本だけらしい。
最近はそうでもないけど年配の人にはまだいる。
理屈で考えたら労働(特に肉体労働)する人に甘いものは
優れたカロリー源だったはずなのだが。

そういえばトルコ人とかベトナム人は
コーヒーに信じがたいほど砂糖入れてガブ飲みするというし
オスマン帝国の軍人たちは飴をなめながら会議したと聞く。
昔会ったフランス人の男もアホみたいに甘いお菓子をバクバク食べてた。

ちなみに18世紀にカリブに植民地を持って以来フランスでは砂糖が安いのだけど
小麦は人口増加に増産が追いつかず不足しがちだったので
場合によっては砂糖やジャムやクリームでかさ増しした
ケーキの方がパンの公定価格より安いということもありえた。
「パンがなければケーキを食べればいいじゃない」
はあながち間違いでもなかったのかもしれない。
閑話休題。


「男は甘いものなど食わん!」

というメンタリティはどこから始まったんだろう。
砂糖が貴重品だった時代に変なストイシズムで始まったのか。
とすると江戸時代のあたりか。
連想して思い出したけど『子連れ狼』(原作の劇画の方)で
悪のラスボス柳生烈堂がなかなか拝一刀を倒せないことを将軍に責められて
一人だけ年始の菓子をもらえず苦悩する、
というシーンがあったけど(うろ覚えですが)
「お菓子がもらえなくて苦悩する最強の剣士(しかも悪の大ボス)」
ってなかなか珍妙な絵面だった。
それはそうとエクレアはうまいのう。
閑話休題2。


食べ終わったので仕事に戻る。
| 吉川良太郎 | 雑学 | 01:30 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
雑学:ジェヴォーダンの獣、の犠牲者数について

さっき一仕事終わったので約束してたコラム補遺を書きます。
といったところで喜ぶ人がどれだけいるのか知らないけれど
言っただろ! 好きなことを際限なく語りたい欲はオタクの三大欲求のひとつだと!
怒ることないじゃないか。


えー。
切り裂きジャックとならぶ近代ヨーロッパの未解決事件「ジェヴォーダンの獣」
『幻の動物たち』の著者ジャン=ジャック・バルロワによれば
本場フランスでは事件当時から現在まで新説が発表されない年はなく、
一応もっとも有力視されている猟師シャストル自作自演説から
着ぐるみをきた殺人鬼説や宇宙人説まであるそうで。

で、そこに海の向こうからしがないマンガ原作者が新説を付け加えたのが
今回の『解剖医ハンター バスカヴィル家の獣』なわけです。
もちろん基本フィクションとはいえ可能な限り史実をふまえておりますが。
(たとえばジェヴォーダン事件は作中の某政治家が失脚した時期に起こっていて、
しかも当時しばしば「体調不良」を理由に公から姿を消し
政敵たちから「陰謀を企んでいるに違いない」と噂されていたという)
というかこれが本当ならぼくは今頃MI6の暗殺者に消されてますが。


ところで
「ジェヴォーダンの獣」事件の本当の犠牲者数は何人なのか。
単行本裏表紙の紹介文では「100人を超えた」となってますが
19世紀末の最初の本格的研究書の著者が確認できた記録によれば130人、
資料によって数字はまちまちですが、だいたいが「100人以上」のようです。
しかし、これは獣の犯行ではない犠牲者もいっしょくたにされている
という可能性が以前から指摘されています。
実際18世紀当時のジェヴォーダン地方にはまだ山賊のたぐいが横行し、
通常の犯罪者による未解決の強盗殺人などはそう珍しくもなかったのだけど
当時の人々の獣への恐怖と猟奇事件への好奇心が
野原で死体を見たらなんでもかんでも「獣の仕業だ!」と思わせた、
ということは十分考えられるわけです。
作中でも言ってますが啓蒙主義者たちが口すっぱくして
「狼男とか吸血鬼とか科学的にありえない!」
と論じていた時代、
しかし躍起になって迷信を葬ろうとするその大量の著作や論文の存在は
逆説的に民衆がそれらの存在を強く信じていたことを証明しています。
18世紀と言えば科学と啓蒙の時代というイメージがありますが
知識人と民衆、都市と農村ではだいぶ開きがありました。
(このへんは種村季弘の著作を参考にしました)

ちなみに脚本の段階では
レダが保護されたとき地方新聞に小さく記事が載るんだけど
「……先週の記事は『南洋で水兵がクラーケンを目撃』だそうだ。
学会で正式に発表するまでは誰も信じないだろうな」
と作中の某詩人が一笑に付すシーンがありました。
長くなるから作画段階でカットしたけど
「クラーケン」云々の記事は当時実際にあった新聞記事です。

話を戻して。
で、実際に獣の犠牲者はどれくらいなのか。
前述のJ=J・バルロワによれば
当時の殺人事件犠牲者数の年平均を割り出し
獣の犠牲者とされた人数から引いてみると、
だいたい「三年間で70人」くらいじゃないかとのこと。
(それでも記録的な数字だけども。
余談ですがフランス革命後の恐怖政治時代には
たった一日で70人がギロチンで処刑されてたりします)
でもあんまりキリがいいと不自然だな。
というわけで、
裏表紙では一般的な説の「100人以上」
作中の真犯人の告白する人数は「68人」、
となっているのでございます。

| 吉川良太郎 | 雑学 | 03:36 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
季節はずれな話

後に近代的な学名の記名法を考案し
「分類学の父」となる博物学者カール・フォン・リンネは
1732
年、スカンジナビア北部のラップランド探検を行った。

とある資料に書いてあった。
ラップランドって「サンタクロースが住んでいる」という設定のゲフンゲフン
もとい確かに住んでる土地なんですが。

甥っ子へ私信。サンタクロースはいるよ。

閑話休題。


「『実は<サンタクロース>はリンネに発見されてつけられた学名』
だったらどうだろうももさん」
「そうねー。冷凍庫にアイスあるよ」


学名 santa-claus
赤と白の被毛を有し、その下に厚く脂肪を蓄積する(寒冷地に生息するため)
二足歩行。知能は道具を扱う(ソリなど)程度に高い。
「ホーホー」という独特の鳴き声をあげる。
トナカイと共生する習性を持ち、12月下旬になると共に「渡り」を行う。
渡りの範囲は全世界をカバーするが、中東では目撃例が極端に少ない。
渡りの際「人間の子供に玩具を配る」という奇妙な擬似給餌行動をとる。
南半球(特にオーストラリア)ではサーフィンをする類似した生物が
目撃されているが近縁種かどうかは不明。

なお日本には冬季に同国北部で目撃される
「なまはげ」という生物の報告例があり、
二足歩行する、道具(包丁など)を扱う、人間の子供に興味を示す、
などの特徴からこれも近縁種ではないかという議論があったが
子供に対する威嚇行動、悪い子を好む、生息地が限られている、
などサンタクロースとは反対の行動を示すことから
むしろ米国ニュージャージー州クリスタルレイク周辺で夏季に目撃される
未確認生物「ジェイソン」との類似性(寒冷地に適応したジェイソンではないか)
が指摘されている。


「どうだろうかももさん」
「今日も暑いねえ」

| 吉川良太郎 | 雑学 | 05:48 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
DJサネアツ
 ラップの元祖って明治の川上音二郎「オッペケペー節」じゃなかろうか。
(リズムに乗せて自由民権に対抗する政府をディスるスタイル。
ちなみにアメリカで成功した日本で最初の芸能人)
と前々から漠然と思っていたんだが
日本にラップを紹介したいとうせいこう氏がラジオで
「ヒップホップのサンプリングって和歌の本歌取りだよね」
と言っていたのを聞いてハッとする。なんとなく敗北感。


「僕は人間に生れ、いろいろの生き方をしたが、皆いろいろの生き方をし、
皆てんでんにこの世を生きたものだ。
自分がこの世に生きたことは、人によって実にいろいろだが、
人間には実にいい人、面白い人、面白くない人がいる。
人間にはいろいろな人がいる。その内には実にいい人がいる。
立派に生きた人、立派に生きられない人もいた。
しかし人間は立派に生きた人もいるが、中々、生きられない人もいた。
(中略)
皆、人間らしく立派に生きてもらいたい」

「まるで針のとぶレコードのようだ」
と山田風太郎に評された晩年の武者小路実篤の文章が
ヒップホップのスクラッチ(レコードを前後に揺すって反復させるアレ)
のルーツだとかこじつけられたらトンデモ本みたいで面白いのだがナニャドヤラ、
と懲りずに思う。
| 吉川良太郎 | 雑学 | 14:26 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
異形コレクション『Fの肖像』が発売されたようです
 ・「フランケンシュタイン」は怪物ではなく怪物を創造した医学者の名前。
ということは今では割と知られているトリビアだと思う。
ただしこの作品が有名になりすぎたため
ドイツ語ではこの名前で漠然と「怪物」全般を指す用法があるそうな。
ところで実際にこの姓を名乗ってる人ってどれくらいいるんだろうか。
本名で呼んでも「怪物くん」て。

・「ギロチン」については昔同じようなこと考えて調べたことがある。
ギロチンは導入者(実は発明者ではない)の科学者の名前。
フランス語のギヨタン(guillotin)の英語読み。
ギヨタン博士は処刑機械が自分の名前で呼ばれることを嫌がって
色々な名前を考えて提唱したんだが受け入れられず、
やむをえず自分の方が名前を変えたという。
なのでこの姓を名乗る人物は今は存在しないらしい。
『ジャイアントロボ』のギロチン帝王は分家かなんかでしょうか。

・余談だけどフランス語でギロチン(ギヨタン)は末尾に「e」を付けて
女性名詞「ギヨティーヌ」(guillotine)とも呼ばれる。
フランス語で「死」にまつわる言葉は伝統的に女性名詞になるからだろう。
聖飢魔兇龍覆法悒ロチン男爵の謎の愛人』てあったなあ。
http://www.youtube.com/watch?v=gAZTYiGwGiI
デーモン小暮には実は珍しいデス声の曲。
ギロチン博士の謎の令嬢ってどうだろう。か、かっこいい……

・「ギヨタン」て『マンガはじめて物語』のキャラクターっぽいなあ。
「ねえねえ、おねえさん」
「なあにギヨタン」

・サドはフツーにいる。いや大貴族の血筋だからフツーにではないか。
とりあえず子孫はサド姓を名乗ってるらしい。
マゾッホはどうだろう。一応文学で勲章もらったスゴい人なんだが。

・フランケンから大いに脱線しましたがいつものことです。
オレはずっとこういう風にやってきた。そしてこれからもだ!
力まなくてもいいじゃないか。

・なにはともあれ『Fの肖像』どうぞよろしくお願いします。


| 吉川良太郎 | 雑学 | 01:26 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
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